もう一度

書き写した空想の世界の中で満足げに笑う僕は

筆を取る君の横顔に　ふいに見惚れる

「もう一度　歌ってくれ」



窓の外で陽気に踊る人影を見て寂しげに笑う君は

ペンを取る僕の横顔に　少し呆れて呟く

「もう一度　チャンスを頂戴」



宛先の無い手紙を大切そうに抱える

留守番電話のメッセージを愛しそうに聞いては微笑む

さようなら　そう言い捨てる事も出来ずにまだ扉が開いてる



書き写した空想の世界に浸るばかりの僕に

夢の中の君が寄り添い　そっと頬を口付ける

「もう一度　手を貸して」



灰色の雨雲に映った君を又愛してしまう

流し込む酒の味に再度君のキスの感触を重ねてしまう

さようなら　そう言い捨てる前に開いた扉がまだ君を待ってる



同じ番号の部屋で

君が残したままのスリッパを揃えた



「もう一度」